ストラトフォード(6)張り出し舞台を用いたミュージカル〜『ガイズ&ドールズ』

 ドナ・フィオール演出『ガイズ&ドールズ』を見た。フェスティバルシアターでの上演だったのだが、グローブスタイルの張り出し舞台を使ったミュージカルなんてめったに見られないので、珍しい経験だ。

 『ガイズ&ドールズ』のようなミュージカルはかなりのセットが必要なので、バルコニーのあるところにはネオンサインなどいろいろな装置がたてられており、そのせいで『ロミオとジュリエット』を見た時よりもステージの奥行きが浅く感じた。このため張り出し部分を多く使っており、張り出し部分にはニューヨークの通りの地図を模した絵が描いてある。冒頭はここにいろいろな人たちが出てきて、忙しいニューヨークの雑踏を表現する。張り出し部分で歌ったり踊ったりするのはさすがにダイナミックだし、振付と踊りのクオリティはすごく高い。フェスティバルシアターは張り出しをできるだけ客席になじませるような作りなので、後ろのほうの席でもダンスが飛び出してくるみたいに見える。

 お話は賭博師スカイ・マスターソン(エヴァン・ビュリアング、Buliungなので発音は怪しい)が救世軍の女軍曹サラ・ブラウン(アレクシス・ゴードン)を落とせるか賭けをするが、本当にサラに夢中になってしまうというのが本筋で、賭博場をやっているネイサン・デトロイト(ショーン・アーバックル)と14年間も婚約しているショーガール、アデレイド(ブライズ・ウィルソン)の恋が脇筋である。女性の貞操を賭けるというのは話としては古いし、性差別的なところもあるので、まあ相当に古くさいお話ではある。

 とはいえ、この演出ではあまり性差別的にならないよう女性のキャラに肉付けし、アホっぽい賭けをしていたスカイがサラにすっかり夢中になってしまうところなども丁寧に心理がわかるようにしている。とくにアデレイドは普通にやるとアホっぽくてうるさい女になりかねない気がするのだが、ストリートスマートでセンスのいい頼れる姐さんふうになっているのがいい。アデレイドのバーレスクショーはすごくかっこよく、明るくて可愛らしいセクシーさがある。終盤の"Marry the Man Today"はサラとアデレイドのデュエットなのだが、この曲はすごく気合いの入った演出になっており、男のことで悩んでいる2人の女性が心を通じ合わせる泣かせる歌になっている。とくに14年も頼りないネイサンに心を捧げてきたアデレイド(可愛くて稼ぎもあってしっかり者なんだから他にいくらでももっといい男とつきあえたはずだ)の純情はしみじみ伝わってくる。さらにこの歌の場面では2人がそれぞれ家庭に入ったボーイフレンドを想像するところがあり、幻想の中のネイサンとスカイが出てくるのだが、救世軍ひとすじのサラはすごく主夫っぽいスカイを想像しているあたりがちょっと面白く、ひねりを感じる。

 そういうわけで、話の古さはちょっと否定できないが、演出でそのあたりをいろいろカバーしようとしていたし、歌って踊って楽しいミュージカルだった。ただ、演出で話の古さをカバーするんならもうちょっと男性ダンサーの露出度も上げたほうがいいのでは…という気がした。なんかちょっとゲイゲイしい話である気もするので、バーレスクの場面では女性だけじゃなく男性ダンサーも入れたらいいのではと思った。