大変よくできているが、あまり好みではなかった〜NTライブ『深く青い海』

 テレンス・ラティガンの『深く青い海』を見てきた。演出はキャリー・クラックネルで、既に一度、クラックネルが演出した『人形の家』を見たことある。

 舞台は戦後のロンドン。ヒロインのヘスター(ヘレン・マックロリー)は夫のウィリアムから離れてテストパイロットの愛人フレディと一緒に暮らしているが、フレディの愛を疑うヘスターは自殺未遂を起こす。これを知ったフレディはヘスターとの別れを決意。大きなショックを受けるヘスターだが…

 台本は非常にしっかりしており、とても緊密な作品だ。戦後のアパートを広いスペースで表現したセットも良いし、役者陣の演技も申し分無い。ヒロインのヘスターは大変奥行きのある女性だし、ヘスター以外のキャラクターもリアリティがあり、不倫状態で愛人と暮らしているヘスターを多めに見る大家のエルトン夫人とかも、ちょっとウザいところはあっても大らかな良い人として描かれていて、このあたりはいいと思う。

 ただ、すごく良くできてはいるがなんとなく好みじゃないなと思った…『ウィンズロウ・ボーイ』もよくできているとは思ったもののあまり心に残らなかったのだが、おそらく私があまりラティガンの芝居が好みではないのかもしれず、『深く青い海』はちょっと全体的に息苦しいと思った。同系列でNTライブでやっていた『スカイライト』もそんなに好きではなかったので、どうも私は男女2人の行き詰まる関係を密室的に描いた作品があまり好みではないのかもしれない。