ドイツの少年たちのさわやかなロードムービー〜『50年後のボクたちは』

 ファティ・アキン監督『50年後のボクたちは』を見てきた。以前世田谷パブリックシアターで見た芝居『チック』と同じ原作のドイツ映画である。

 あらすじは『チック』同様だが、お芝居にあった最後におじいさんに会うエピソードなどはカットされている。芝居は中盤ちょっとたるんだ感じがするので、これは映画のほうが良いのではと思った。映画であるため映像を使って説明を簡潔にすることができ、風車とか畑などの場面はけっこう綺麗な撮影で少年たちのワクワク感を示していて、あまり長い映画ではないのだが満足感がある。

 学校でのけ者にされている男の子2人、マイク(トリスタン・ゲーベル)とチック(アナンド・バトビレグ・チョローンバータル)が夏休みに乗り物に乗って家出の旅に出かけるというのは去年のミシェル・ゴンドリー監督『グッバイ・サマー』と似ているのだが、『グッバイ・サマー』よりもはるかにちゃんと細かいところを詰めていて、子どもたちが直面している人生のシビアな現実についても描写が巧みだと思った(ただ、これは舞台版のほうがさらに上手だったかも)。マイクがちょっと女の子っぽいのに対してチックはいかにもコワモテで、子役は2人ともとても生き生きしていて芸達者だ。キーワードになっている「50年後」について、編集でこの場面だけをフラッシュバックにして強調するという演出も上手で、なんともいえないノスタルジーを醸し出す効果があってよかった。さわやかで生き生きしたロードムービーで、とてもオススメだ。

 なお、この映画はベクデル・テストはパスしない。女性だけで話す場面がほとんどなかったと思う。