ジョン・キャメロン・ミッチェル来日!パフォーマンスは素晴らしいけどちょっとハコがデカすぎた、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』

 東急シアターオーブジョン・キャメロン・ミッチェルが来日して主役を演じる『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を見てきた。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』については論文を書いてるくらい好きだ。

 ジョン・キャメロン・ミッチェル演じるヘドウィグがステージに出てきた瞬間ボロボロ涙が出てしばらく神経がおかしくなってしまったためあまり冷静に分析はできないと思うのだが、パフォーマンスじたいに関しては大変良かったと思う。50過ぎてるのにきわめてパワフルなジョン・キャメロン・ミッチェルはもちろん、イツァークを演じる中村中も非常に熱演している。日本で上演するにあたって台本をかなりローカライズしており(台詞も「(東ドイツではなく)北朝鮮から逃げてきたバンドです!!」とか…)、日本語がしゃべれる中村中演じるイツァークがヘドウィグのかつらをかぶって台詞の部分をほとんど言うという展開にしている。おそらく字幕でやるとあまりライヴ感がなくなるからという苦肉の策なのだろうが、こういう展開にすると最後にヘドウィグがイツァークにカツラをかぶせてあげる場面に違う意味が出て、この二人は実は一心同体でヘドウィグがそれを認めたんだ…ということになるので、悪くはない。演奏もエネルギッシュだし、非常に満足した。

 ただ、ハコがデカすぎて照明プランがちょっとうまくいってないと思った。この台本は親密感のある小劇場を念頭に書かれたものだと思うので、大きい劇場でやる時にはけっこう大変だ。風船でできた大きな人形にプロジェクションを使ってトミーやヘドウィグのお母さんを示すという美術は良いし、セットや背景の画像自体は悪く無い。ただ、場面によっては舞台後方に背景を投影して、人にはピンスポットをあてて、歌の字幕を背景に出すということをやっている。これは非常に見た目がうるさくなり、一体どこを見ればいいのかわかんないし、背景がボケて字幕も読みづらくなるので良くないと思った。字幕は両脇か上に出したほうがいいし、背景とピンスポットを一緒に使うときはもうちょっと控えめにしたほうがいいと思う…というか、ピンスポットはむしろ過剰すぎていらないのではという気もした。最近、手の込んだプロジェクションが舞台でできるようになったせいで、背景に何か投影して人にはピンスポットをあてるという演出をたまに見かけるのだが、プロジェクションの背景は絵や大道具で作った背景ではないので、ピンスポットを多用するとかえって全体の印象がボケちゃって見映えが悪くなることがあると思う。