ゴスなのにコメディ、マーヴェル映画初のバイセクシュアルヒーローも!〜『マイティ・ソー/ラグナロク』

 『マイティ・ソー/ラグナロク』を見てきた(日本語タイトル『バトルロイヤル』はダサすぎなので無視することにする)。

 前作で死んだふりをしていたロキ(トム・ヒドルストン)が父オーディン(アンソニー・ホプキンス)になりすましてアスガルドを治めていたところにソー(クリス・ヘムズワース)が帰ってきて、オーディンを探しに行くが結局オーディンはお亡くなりになってしまう。オーディンの死とともに、オーディンの長女で幽閉されていた死の女神ヘラ(ケイト・ブランシェット)が帰ってきてアスガルド支配を画策。神々の死闘、ログナロクが始まるが…

 ケイト様演じるヘラのヴィジュアルをはじめとして美術はけっこうゴス好みのちょっとレトロな感じなのだが、話はユーモアたっぷりで、最初からふざけたジョークでいっぱいだ。このゴスっぽい外見と面白おかしい内容がどういうわけだかうまく調和しているので、全体的に非常に面白く見ることができた。戦闘場面ではここぞという時にレッド・ツェッペリンの「移民の歌」がかかるのだが、歌詞もぴったりだしこの曲の使い方としては最適と言える。ソー、ロキ、ハルクといったこれまでのお馴染みのキャラクターはもちろん、氷の美貌を持つゴスの凶悪女王ヘラははまり役だし(いかにもコミックのスーパーヴィランなのだが、たぶん子どもなら本気で怖いだろう)、ちょっと出てきて場面をさらうグランドマスター役のジェフ・ゴールドブラムとか、芸達者が揃っている。けっこう本格的な劇中劇の場面があるのだが、そこに登場するカメオ出演もやたら豪華だ。

 とくに良かったのは新キャラのヴァルキリー(テッサ・トンプソン)だ。ヴァルキリーは女戦士の種族唯一の生き残りで、戦争のトラウマで故郷を捨てて賞金稼ぎをしながら酒に溺れて暮らしているのだが、着るものも振る舞いもあんまり過剰に色っぽくない一方で戦闘服とかはすごくキマってるし、マーヴェルコミックスの映画としては珍しい奥行きのある女性のヒーローだ。さらにヴァルキリーはバイセクシュアルだ。回想場面で、過去に起こったヘラとの戦闘を思い出すところがあるのだが、ここでは仲間女性が身を呈して守ってくれるという描写があり、おそらく恋人だったのではと思われる。一方でイイ男にも無関心ではないらしい描写もあるし、演じたテッサ時点が公式設定でバイセクシュアルだと言っているので、ヴァルキリーは女性で非白人でクィアでしかも奥行きがある、アメコミ映画ではかなり画期的なヒーローだろう。