ルネサンスの宮廷庭園になるパルテノン多摩~劇団子供鉅人『夏の夜の夢』

 パルテノン多摩で『夏の夜の夢』を見てきた。パルテノン多摩の池の周りで行われる野外上演で、劇団子供鉅人が100人でシェイクスピアをやるという企画である。

 

 パルテノン多摩の池の周りは、正直パフォーマンススペースとしてはかなり問題のあるところだ。半円の形をした池の周りに散歩できる歩道があり、その半円の前に客席を設置して、池の前の平たい部分と池を全部使って上演をする。何しろ客席が完全に平たいので、後ろに座ると大変見づらい。さらに音響は最悪レベルだ。野外でしかも平たくて広いところなので台詞がそもそも聞き取りづらい上、基本的に公園みたいなパブリックスペースの中で、普通にご近所の市民が池の周りを歩いていたり、客席より後ろの区切られた部分で談笑していたりするので、その音が全部上演スペース内に入ってくる。このため、そもそもの音響の悪さと、市民の話し声や足音が干渉するせいで、あまり台詞が聞き取れないところがけっこうあった。たまにマイクを使っていたのだが、もっとマイクをたくさん使用したほうがいいと思う。あと、市民には大変申し訳ないのだが、池の周りの立ち入りを一時的に制限したほうがいいと思う。

 

 しかしながら、実はこの池を用いた上演というのは、ルネサンスの豪華な芝居を上演するには実にふさわしいとも言える。パルテノン多摩で『夏の夜の夢』を上演した場所は下の動画みたいな感じだが、17世紀にスペインで宮廷祝宴の出し物が行われたレティロの庭園は下みたいな感じである。

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 ルネサンスの宮廷祝宴劇は、お屋敷の庭園にある湖などを使った大がかりなものもけっこうあり、その点ではこの『夏の夜の夢』はすっごくルネサンスらしい。そして益山貴司の演出も、芝居を祝祭らしくすることについては大変うまくやっている。池の真ん中にベッドを配置し、それをパックが使うというのはテイモア版に似ているが、やはり水の中にあるというのが幻想的だ。しかしながらこの池はライトアップされた幻想的な風景だけではなく、たくさんの妖精に扮した人たちが池に入って水の上を動き周る時にはしっちゃかめっちゃな遊びの空間になる。最後は湖の上で職人たちが芝居をやり、宮廷人たちに見せるということで、どちらかというとちゃちなセットなのに、まるで本当にルネサンスの宮廷にいるような気分を味わえる。全体的に遊びの要素が多い賑やかな上演であるということもあり、本当に夏の夜の夢のひとときといった。

 

 ちょっと珍しいのは、シーシアス/オーベロンが1人2役(益山貴司)という王道キャスティングである一方、相方であるティターニアとヒポリタを1人2役にするのはやっておらず、ティターニアとライサンダー(益山寛司)が1人2役だということだ。ティターニアは大変迫力のある妖精の女王で、序盤では完全にオーベロンを圧倒しまくっていて、そのせいでオーベロンが怒って花の悪戯を仕掛けたのだろうな…と思って見ていた。