笑いが多いが、意外と台本の流れに忠実~宮藤官九郎演出『ロミオとジュリエット』

 宮藤官九郎演出、M&Oplaysプロデュース『ロミオとジュリエット』を本多劇場で見てきた。

 

 セットはジュリエットの家に見立てた壁で仕切られていて回転するようになっている。ブロックを大きくしたようなカラフルな箱などがそのへんに散らばっており、壁以外のセットはわざとチープにしてあって、ちょっと保育園とか子ども図書館の遊び場みたいな見映えである。衣装の色合いも含めて、意図的に学芸会っぽい見た目になるようにしてある。

 

 演出は全体的に非常に笑いが多い。『ロミオとジュリエット』は本来は喜劇になるような筋書きなので(恋人たちが保守的な大人を出し抜いて一緒になるというのは恋愛喜劇のプロットだ)、笑いが多い演出にするはとくに珍しくはないのだが、できるだけ肩の力を抜いてリラックスして見られるような作りになっているところが特徴だ。登場人物たちもわりと親しみやすい雰囲気に作っており、ロミオ(三宅弘城)は引きこもり気味でユーウツな性格の小柄な若者なのだが(四頭身なのが劇中でネタにされてた)、それが恋に落ちて急にとても生き生きし始める。ジュリエット(森川葵)もごくフツーの女の子なのだが、ただそれならもうちょっと女言葉を使わない現代っ子らしい話し方に台詞を崩しても良かったと思う。ロレンス修道士(田口トモロヲ)は近所のおじさんみたいな感じなのだが、突然憑依されたりするのでギャップがすごい。こんな感じでお笑いを繰り広げるのだが、最後はちゃんと可哀想な恋人たちの死でメリハリをつけて悲しく落としているものの、あまり重い雰囲気はなく、むしろ親や社会の抑圧がなくなったあの世でロミオもジュリエットもバカ騒ぎをしてるんじゃないかというような後味で終わる。

 

 わりとアドリブなどがある一方、『ロミオとジュリエット』の上演としてはあまりカットを行っておらず、比較的台本の流れ、とくに笑いと深刻な場面のメリハリの流れに忠実だ。たいていの上演ではカットされる、第4幕第4場でピーターと音楽家たちが話すところが残っており、それどころかコントまで付け足されている。ここはもともとコミックリリーフを提供する場面だと思うので、こういう笑い重視の上演だと残しておくのが適当なのだろうと思う(ピーターがかなり活躍する)。薬屋の場面も、パリスが殺されるところもちゃんとやっている。そのかわりにロミオから結婚式の予定を知らされた乳母が帰ってくるところなどがカットされている。