舞台に出る月~札幌文化芸術劇場hitaru、斎藤歩演出『ゴドーを待ちながら』

 新しくできた札幌文化芸術劇場hitaruのスタジオで、斎藤歩演出『ゴドーを待ちながら』を見てきた。

 

 セットはシンプルで木が一本あるだけなのだが、横に長いセットで、そのセットの縦の辺を囲むようにして二方向に客席がある(満員でパイプ椅子を追加してた)。『ゴドー』としてちょっと面白いと思ったのは、第1幕と第2幕の最後に月が出るところで、実際に細長い棒の先につけた丸い月を裏方が持ってきて舞台上に挿して立てるという演出をやっているところだ。ちょっと『夏の夜の夢』の職人達の芝居を思い出したのだが、実際に月が出るだけでずいぶん舞台の殺風景さがなくなり、私が見たゴドーの中では比較的派手というか、月の光を通じて多少の救いがある雰囲気になっていたと思う。

 

 ディディ(納谷真大)とゴゴ(斎藤歩)はかなり息があっていてアドリブが多かったのだが、このプロダクションのディディはしょっちゅう股間を押さえていて、私が今まで見たディディの中では一番、尿の具合が悪そうだった(ディディが排尿障害なのは淋病か前立腺肥大症だと思っていたが、このプロダクションでは結石の話をしていたのでたぶん結石だと思うのだが、ただ結石の話がやたら自然だったのでアドリブかも)。後半が大変面白おかしくて、笑い転げるようなところがたくさんあったのは良かった。この舞台は不条理ながらもドツキ漫才みたいに笑えないとやる意味がないと思うのだが、実にツボをよく抑えた後半だったと思う。