長い!デカい!面白い!〜『エンジェルス・イン・アメリカ 第一部 至福千年紀が近づく』

 NTライヴでトニー・クシュナーの『エンジェルス・イン・アメリカ 第一部 至福千年紀が近づく』を見てきた。言わずと知れた有名作で、マリアン・エリオット演出である。既に一度、日本語で見たことがあるのであらすじなどはそちらで見られる。
 
 「ゲイ・ファンタジア」とかいう副題がついているのだが、それにふさわしい、とにかく長くてデカくて面白くてこれぞ芝居だ!という作品だ。80年代ニューヨークでエイズの脅威にさらされるゲイたちの人生と、20世紀アメリカの政治史が交錯する内容で、個人的な悲劇や苦痛を描いている一方でたいへんスケールが大きく、またスピリチュアルなファンタジーでもある。第一部だけで3時間半もあるのだが、ヴィジュアル的にもいろいろな工夫があって飽きさせない。一番最後が極めて派手な天使の到来で終わっていて、まるでクリフハンガーみたいなので、続きを見たいという気にさせられる。

 セットデザインはかなり凝ったもので、間仕切りがある部屋を回転させていろいろな人々の人生を見せるというものだ。複数の違う部屋を接した状態で見せられるのが強みで、それをうまく活用している。途中でプライア−(アンドルー・ガーフィールド)とルイス(ジェームズ・マカードル)、ジョー(ラッセル・トーヴィ)とハーパー(デニース・ゴフ)の会話が、違う次元なのだが同じ平面上で交錯して起こるところがあり、ここの盛り上げ方はとても良いと思った。プライア−とハーパーの幻覚が交錯するところなども、このセットをうまく使っていた。

 キャストの演技は皆とてもよかった。プライア−を演じるアンドルー・ガーフィールドとロイ・コーンを演じるネイサン・レインの顔芸が見物だ。ガーフィールドエイズで苦しんでいる役柄なのだがあまり湿っぽくはならず、面白おかしい顔や台詞で笑わせる一方、ルイスに捨てられた苦しみや死への恐怖の表現は非常に哀切だ。ネイサン・レインのロイ・コーンは、いつもにこにこして親しみやすそうなのに平気で怖いことをするあたりが面白い。テレビドラマ版ではアル・パチーノがやった役なのだが、濃くて厚みのあるパチーノに比べるとちょっと軽薄そうなオッサンであるところがまた違う味でいいと思った。

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