む、むずかしかった〜『「弱虫ペダル」新インターハイ篇〜箱根学園王者復格』(ネタバレあり)

 2.5次元観劇会で、『「弱虫ペダル」新インターハイ篇〜箱根学園王者復格(ザ・キングダム)』を見てきた。『弱虫ペダル』は初めて見たのだが、今までテニミュを2回見て、とくにうろたえるようなところはなかったのでわりと高をくくっていたら、けっこうハイコンテクストで難解だった…これは原作を知らないとかなり厳しいかもしれない。

 まず、話はインターハイが中心なのだが、「なんでここで始まってここで終わるの!?」みたいな開始と終わりなので、ちょっと面食らった。始まるところはまあ、一応見てたら「まあなんかいろいろ因縁があってインターハイに出たんだろう」とわかるからいいのだが、最後はインターハイでゴールする前に終わってしまうのでビックリした。次はいったいどこで始まってどこで終わるんだろう?

 噂に聞いていて見たいと思っていた、実際に自転車を使わず、ハンドルだけ持って出て役者がずっと漕いでる仕草をする演出はやっぱり面白かった。さらに、こうやって実際に自転車を舞台に出さないようにすると、場面転換で自転車を動かさなくていいのでたいへんシーンの移り変わりが迅速でスムーズになる(かなり場面転換は多くてめまぐるしい)。ただ、役者があまりにも体力を使いすぎてかなり滑舌や歌は犠牲になっている(息があがってしまって台詞どころじゃないところも見受けられる)。まあ、それは演目の性質上しょうがないのではという気もするが、役者の体調が心配になるくらいみんな動きっぱなしなのはちょっと驚いた。

 ただ、舞台の上で行われている演出じたいは非常に体力勝負で道具類を使わないシンプルなものなのに、照明は凝りに凝っており、このあたりのスタイルのギャップに慣れるのにもちょっと時間がかかった。舞台は自転車の車輪を模した背景があり、そこに台とスロープが設置されていて、このスロープを動かして自転車の上り下りルートを表現する。スロープは人力で動かしているし、あえて原始的に見えるような演出をやっている感じだ。そこに照明を使って自転車の車輪が回る様子なんかを見せるのだが、この明かりの演出のほうは相当に複雑で、キャラや場面の性質ごとに車輪の色や映す場所などが違ったり、強い光を使っていろいろ動かしたり、凝っている。舞台で実際に役者がやっている単純な動きと、照明の複雑さの間にかなりスタイルの違いがあるので、最初は面食らった。

 キャラのほうは、まあ全員名前を覚えるとかは最初からあきらめているのでいいのだが、キャラはけっこう狂気をはらんだアクの強い変人が多かった。とくにひたすら筋肉に執着している小鞠というキャラが一番変人度が高かったのだが、演じている天羽尚吾は動きが柔らかくて身軽で、また見た目も女形みたいなので、『お気に召すまま』のロザリンドとか『十二夜』のヴァイオラとかが似合いそうだと思った(既にシェイクスピア劇で女形をつとめたことがあるらしい)。他のキャラではなんかねちねちしている御堂筋と、自分の筋肉に名前をつけている泉田がけっこう強烈だった。主人公の坂道はちょっと純粋すぎて、他のキャラ(とくに泉田と小鞠の出演場面が強烈だった)に比べると、少なくともこの演目ではあまり目立っていない気もする。