突然の農業フェア克明描写〜『マディソン郡の橋』

 シアタークリエで『マディソン郡の橋』を見てきた。

 全体的にはフランチェスカ(涼風真世)とロバート(山口祐一郎)の不倫を切なく綴ったロマンスもので、いろいろなジャンルをミックスした感じの音楽なども良かった。とくに涼風は、イタリアからやって来て努力してアメリカに馴染んだところ、自分が経験した過去の世界とのつながりをロバートに見い出して恋に落ちてしまうフランチェスカの心境を生き生きと表現していて良かったと思う。ただ、日本語の台本ではフランチェスカにイタリア訛りがあるというがよくわからないので、このへんはちょっと工夫が必要かと思った。あと、昔本を読んだ時はよくわかっていなかったのだが、これは60年代のカウンターカルチャーがまだ完全には到達していないアメリカの田舎町というのが社会的背景としてあることがこの舞台ではよくわかった。

 ただ、見ていてそれ以上に気になってしまったのが、アイオワ州の町の様子とか、農業フェアの場面などがやたら克明に描かれていることである。フランチェスカが近所の人たちのことを詳しくロバートに説明したりする場面とかは要らないのではと思ったし、あと農業フェアについてこんなに時間をかけて説明する必要はあるんだろうか…かぶりもので家畜の真似をする役者が出てきたりするあたりは笑いを誘うが、歌を使って克明描写するところは不要な気がした。アメリカのお客さんはやっぱり農業フェアとかに興味があるのかもしれないとは思うが、フランチェスカとロバートのロマンスと同じくらい、農業フェアに行っているバドと子供たちの葛藤にもたくさん時間が割かれているので、ちょっと配分のバランスが悪いように思う。もっとロマンスだけの話でもいいのではという気がする。