死を出し抜く〜『エンジェルス・イン・アメリカ第二部 ペレストロイカ』

 NTライヴで『エンジェルス・イン・アメリカ第二部 ペレストロイカ』を見てきた。『エンジェルス・イン・アメリカ第一部 至福千年紀が近づく』の完結編である。第一部同様、セットをうまく使った動きのある演出と、役者陣の演技で、重厚なクライマックスへ突っ込んでいく感じだった。

 第二部のテーマは死を出し抜くということなんじゃないかと思った。ネイサン・レイン演じるロイ・コーンが、幽霊として出てきたエセル・ローゼンバーグに対して死んだふりをして騙そうとするところがあるのだが、ロイはひどい人間で結局死ぬことにはなるし、かつこの場面でのロイはものすごく厚かましくて不愉快ではあるのだが、それでも一度だけでも死を出し抜こうとしているような必死な感じがあって、笑っていいのか怒っていいのか泣いていいのか、見ていて非常に不思議な気分になる。ロイが死んだ後、ベリーズ(ネイサン・スチュアート=ジャレット)とルイス(ジェームズ・マカードル)がロイの薬を盗もうとし、ルイスが幽霊のエセルの助けでユダヤ教の祈りを唱えるところも良い。この芝居のヒーローであるプライアー(アンドルー・ガーフィールド)は天使と会い、召命を拒否して命を選ぶわけだが、この場面のプライアーは全身全霊で死を出し抜こうとする、非常に人間的で、弱さと強さを併せ持った存在だ。ごく平凡な人間であるプライアーの決意をガーフィールドが非常に熱演していて、とても良かったと思う。プライアーが『欲望という名の電車』のブランチの有名なセリフを引用するところもあるのだが、ブランチと違ってプライアーは病や狂気と戦って生き延びたわけで、最後になんとかHIVを生き延びてベセスダの噴水の前に立つプライアーは、ちょっと『欲望という名の電車』のハッピーエンド版みたいな感じもする。あまりにも重たい話なのでちょっと見ていて考えがまとまらないところもあるが、とにかく圧倒的だった。