怒濤のヒロインアクション映画〜『悪女/AKUJO』(ネタバレあり)

 『悪女/AKUJO』を見てきた。

 ヒロインのスクヒ(キム・オクビン)は幼い頃に父を殺され、延辺朝鮮族マフィアの有力者であるジュンサン(シン・ハギュン)に引き取られる。暗殺者として育てられたスクヒは、やがてジュンサンと結婚する。しかしながら結婚直後にジュンサンは敵対組織に暗殺され、スクヒは復讐といて相手を皆殺しにする。これに目をつけた韓国の国家情報院は、政府の暗殺者としてスクヒを教育し、見張りをつけて任務を執行させようとするが…
 上に動画を貼ったが、冒頭のファーストパーソンシューターみたいな長めのPOVアクションがとにかく面白い。最初はPOVショットなのだが、主人公が鏡に放られて顔がわかった後、POVじゃなくなるというアクションのつなぎ方が非常にうまかった(鏡に映って顔がわかるっていうのは古典的ではあるのだが)。顔がうつると若くて一見非力そうな女性が見えるっていうところは、プロディジーの「スマック・マイ・ビッチ・アップ」にちょっと似てる。
 全体的にアクションは凄い。とにかくけれんとスタイル重視のもので、とくに中盤のバイクで道路を走行しながらヤクザ?と日本刀で斬り合う場面は面白いのだが、あまりにもリアリティを無視して見た目の美しさと迫力だけを考えており、ちょっと笑えるくらいだ(高速で移動する物体の上で長い刀を使って斬り合うのは、いくらなんでも不便すぎる)。この場面はCGを使っていないらしいのだが、おそらく監督は昔の日本のチャンバラ映画を中心に、剣戟アクションがかなり好きなんだろうな…という気がした。
 話は『ニキータ』に似てるのだが、展開は最近のハリウッドブロックバスターの影響を受けているのか、ちょっと複雑すぎるきらいがある。まあ、そもそもジュンサンが暗殺者として育てた養女分のスクヒと結婚しているあたりで、こいつはおそらくまともな男じゃないと察しがつくようになっているので(スクヒがジュンサンを父なのか夫なのかわからない距離感で扱って甘えるあたりはあからさまに居心地悪く描かれてる)、けっこう先が推測できるというのはあるのだが、それでもかなり入り組んではいる。もうちょっとすっきりさせてもいいようには思う。
 女性キャラクターの描き方はかなりちゃんとしており、最初はジュンサンに、次は国家に搾取される悲劇のヒロイン、スクヒが人間味のある女性として描かれている。スクヒとミンジュが話すところでベクデル・テストはパスするし、諜報機関のボスであるクォン幹部(キム・ソヒョン)のドライな感じも良かった。