女性同士の絆は良かったが、うまくいってないところも〜『あなたの旅立ち、綴ります』

 『あなたの旅立ち、綴ります』を見てきた。

 大成功した企業家で今は偏屈なおばあさんとして一人暮らしをしているハリエット(シャーリー・マクレーン)は、自分の訃報記事のことを考え始め、地元紙の訃報記者アン(アマンダ・サイフレッド)に連絡をとって訃報の取材をしてもらう。しかし、ハリエットのことをよく言う人がほとんどいなかったため、ハリエットは一念発起して訃報に書いてもらえるようなことをしようとする。DJとして活動を開始し、アンとも親交を深めはじめるハリエットだが…

 年齢が違う女性同士の友情を描いた話で、女性同士の会話は非常にうまく書けている(ベクデル・テストはもちろんパスする)。ハリエットを演じるシャーリー・マクレーンの演技はさすがといった感じだし、アンを演じるアマンダ・サイフレッドとの息もぴったりあっている。年を取ってからでも人生は変えられるんだということをポジティヴに描いているところもいい。全体的にマクレーン演じるハリエットの強烈な我が道を行くばあちゃんぶりと、ちょっとすっ飛んだユーモアが特徴で、笑うところもたくさんある。

 ただ、ハリエットがアフリカ系アメリカ人の少女ブレンダ(アンジュエル・リー・ディクソン)と仲良くなるあたりの展開はけっこうイマイチだと思った。ハリエットは、訃報のネタとして誰かの人生を変えなきゃならなくて、しかもそれがマイノリティの相手だったほうがいいからということでアフリカ系アメリカ人の子供たちの教育施設を訪問し、そこでブレンダと知り合うという展開になっている。こんな不純な動機をきっかけに話が進むあたりはアメリカ人の考え方をきつく諷刺していていいのだが、その後が全然機能してない。悪ガキのブレンダがどういうわけだか都合よくハリエットを助けてくれるようになって、始まり方は良かったのに終わり方は完全な人種的ステレオタイプになってしまっている。アフリカ系アメリカ人の頭も良さそうな子が、チャリティで訃報ネタを!みたいな下心満々の白人のばあちゃんにあんなにすぐなつくとは思えないし、遠くまで車で行く旅行にほいほいついていっちゃうのもちょっとご都合主義がすぎる。ブレンダ役の子役のディクソンは演技も上手でいいキャラなのに、扱いが残念だった。

 また、日本語タイトルもちょっとイマイチかなぁという気がする。『あなたの旅立ち、綴ります』だとお涙頂戴っぽいが、これって『ワタシの訃報はワタシが決める!』みたいな、ちょっとコメディっぽいタイトルにしたほうがよかったんじゃないだろうか…どちらかというと笑う映画だと思う。