出来は悪くはないが、こういう話を見たいかどうかは別〜『ホース・ソルジャー』(ネタバレあり)

 試写会に呼ばれて『ホース・ソルジャー』を見てきた。911テロ直後にアフガニスタンに派遣され、馬に乗ってタリバンとの戦いに加勢したアメリカ軍の12名の兵士を扱った映画である。かなりの部分が実話に基づいているらしい。

 主人公は大尉のミッチ(クリス・ヘムズワース)で、アメリカ側としては他に准尉のハル(マイケル・シャノン)やサム(マイケル・ペーニャ)、ベン(トレヴァンテ・ローズ)などが主要人物である。乗馬が得意なミッチの指揮でアフガニスタンウズベク軍閥のトップであるドスタム将軍を支援し、マザーリシャリーフをタリバンから奪還するまでが描かれている。

 そもそも、アメリカ軍がアフガニスタン人を助けてタリバンに勝利した話を見たいかっていうと全然見たくはない…というところがある。まあ、この話もかなりの間軍事機密で詳細が公開されていなかったらしいし、アフガニスタンにおける2001年以降の戦闘について映画にできるようなところなんてそんなにないだろうと思うので(見所うんぬん以外にまだ機密のものがあるかも)、この話を映画にしようと思ったのはまあわかるのだが、そうは言ってもこんなアメリカの自慢話見たいかよとは思う。

 とりあえず、非常に男男した話である。兵士たちがアメリカに残してきた妻以外、ほとんど男性しか出てこないし、ベクデル・テストはパスしない。展開としては、ミッチとドスタム将軍がカウボーイ同士の絆を作るようになるというブロマンス展開がある。兵士たちの中でもとから馬に乗れるのはミッチだけで、非常に文化が異なってはいるが、年配で子供の頃から馬に乗って戦ってきたドスタム将軍と話し合ううちに友人になり、一度モメて別れることになるが最後はドスタムが戻ってくるということで、大道のブロマンス展開である。ドスタム将軍は実在の人物で今ではアフガニスタンの副大統領なのだが、おそらくかなり美化されていると思われる(地方の軍閥のトップらしく人間関係のしがらみについてこせこせした気まぐれなところがあるのはリアルに描かれてるのだが、それでもわりと信義を重んじる立派なベテラン軍人風ではある)。

 戦争映画としてはまともな部類だと思う。現代戦なのに騎兵メインなので、ビジュアル的には面白いところもたくさんある。ただ、この尺ならもう少し刈り込んで、敵の主砲を潰すところをもっと丁寧に盛り上げたほうがいいような気もした。個人的な趣味として、戦争映画のサスペンスで大事なのは敵の主砲をどう潰すかだと思うのだが、この映画ならもっと盛り上げられた気がする。一応主砲の場所を特定して突撃するというプロセスはあり、そこそこ盛り上がりはするのだが、ミッチが「次の装填まで時間があくから進もう!」と言って突撃する…のはいいけどその間に何をすればいいのかとかをあまり言葉で説明してくれないので、そんなに戦争映画に詳しくない人が見るとちょっと「何をすれば勝てるの?」と疑問に思うところがある。さらにとうとう主砲が潰れるところは、ミッチが味方の兵士を助けようとして吹っ飛んで大混乱のうちに主砲潰れてました…みたいになって意外とあっさりかつごちゃごちゃしているので、もうちょっと脚色してもいいから整理して盛り上げたほうがよかったのではという気がする。