バランスのとれたロマンティックで可愛らしい青春映画〜『彼の見つめる先に』

 ダニエル・ヒベイロ監督『彼の見つめる先に』を見てきた。

 舞台はブラジルのサンパウロ。目の見えない高校生の少年レオ(ジュレルメ・ロボ)は親友の少女ジョヴァンナ(テス・アモリン)と助けあいながら高校生活を送っていた。夏休み明けにハンサムな転校生ガブリエル(ファビオ・アウディ)がやってきて、学校の課題をやる過程でレオと親しくなる。レオは自分がガブリエルに恋していることに気付くが、友達以上恋人未満だったレオを奪われるのではと思い始めたジョヴァンナは気が気ではない。さらに、レオの母は息子を心配するあまり過干渉気味になってしまい、息子と仲違いを…
 
 軽妙で可愛らしいロマンスものなのだが、よく考えるとけっこう大変なテーマを扱っている。障害のある若者が自分を心配するあまり過保護になりすぎる親との関係に悩んでおり、さらに自分が同性に恋していると気付き始めて友達との関係もうまくいかなくなる…なんて、描き方によっては悲惨な話にもなりそうな、相当シリアスなテーマだ。しかしながら全体的に非常にタッチが明るく、終わり方も楽しいものになっている。また、レオやガブリエルが自分の性欲と恋心に気付き始めるあたりの描写も、若者の心境としてはけっこう真に迫ったものになっているのだが、これ以上やるとちょっとやりすぎでエグくなるのでは…というところで止めていて、リアルさとロマンティックさのバランスがちょうどいいところに踏みとどまっている。なんといっても登場人物が三人ともほぼ子供で不器用なので、ちょっと加減を間違えると痛々しくなったり逆にアホみたいになったりしやすいと思うのだが、見ていてそういうところがない。基本的に、ブラジルの明るい光の中で展開するとてもロマンティックな映画だ。

 レオの学校生活なんかも、障害とか同性愛といったものを生活の一部としてわざとらしいところがなく描いている一方、レオが受けるいじめなんかは容赦なく描いていて、そのあたりも非常にバランスがとれている。レオは盲学校ではなく目の見える子たちの学校に通っているのだが、ジョヴァンナや先生たちをはじめとした多くの子たちはレオに自然に接している一方、悪ガキどもはレオをいじめている。この悪ガキどものいじめについては、他の子たちはあまりよく思っていないらしいということが示されていたり、最後にちょっといじめっ子たちを見返してやる場面があったりして、あまり暗くならない描き方になっている。一方、ガブリエルも含めた友人たちがレオに「〇〇を見に行こうよ!」とか言ってその誘いがダメだったことに気付く…という描写がいくつかあり、このあたりも若者同士の会話としてはなかなかリアルだし細やかだと思った(ただし女の子同士の会話はなく、ベクデル・テストはジョヴァンナとレオのお母さんの夕食についての会話でかろうじてパスする)。ここから、レオがガブリエルと何かを一緒に「見に行く」ということをやってみて恋に落ちるという展開がニクい。何を見たとかいうよりむしろ、何を一緒に体験するかが大事だ。