内容は良かったのだが、撮影がとにかく苦手〜『BPM ビート・パー・ミニット』

 『BPM ビート・パー・ミニット』を見てきた。1990年代にエイズ禍と戦うため結成されたACT UPパリの活動と、所属する人々の病との戦いを描いた映画である。

 ACT UPパリの活動はけっこう過激なもので、とくに参加者の命がどんどん危険にさらされ、残された時間が少ないということが明らかになってくるとともにさらに無策な政府や企業に対する怒りが増していく。主人公はその中でもとくに過激なショーン(ナウエル・ペレーズビスカヤート)と、最近活動に参加したばかりでHIVに感染していないナタン(アルノー・ヴァロワ)のカップルで、前半は活動の様子、後半は病気が悪化してどんどん体調が悪くなるショーンの病との戦いと看取りを描いている。

 内容や役者の演技は良かったし、最後にショーンの遺灰を保険会社に対して抗議行動でブチまけるプロテストと、恋人を失ったナタンがティボー(アントワン・ライナルツ)を呼んでセックスする場面を交互に見せることでセックスと死の重なりを象徴させる演出とかはとてもよく考えられてると思ったのだが、全体的に私が最も個人的に苦手とする、ドキュメンタリーっぽくするためにカメラをやたら動かす撮影にわりとめまぐるしい編集を組み合わせており、視覚的には超苦手な映画だった。これは完全に好みの問題なのだが、カメラを完全に固定してじっくり撮ったほうがいいと思えるようなところもけっこう映像をフラフラ動かしており、時々カメラ酔いしてしまった(まあ、普通のドキュメンタリー映画よりはそれでもマシなのだが)。なお、ベクデル・テストはソフィとショーンのお母さんの食べ物についての会話でパスする。