台本はいいが…スタジオライフ『アンナ・カレーニナ』

 スタジオライフ『アンナ・カレーニナ』を見てきた。言わずと知れたトルストイの有名作をジョー・クリフォードが舞台に翻案し、それを日本語化したものである。演出は倉田淳で、私が見たのはダブルキャストのИのほうだった。

 背景に木の枝のような棒がたくさん立ててあり、ちょっと森みたいな雰囲気のセットが作ってある。その前に傾斜がつけられた台があり、それを使って入退場できる。

 全体的に台本はけっこうしっかりしている。赤いドレスを着たアンナ(岩粼大)と、義理の妹でどちらかというと地味なドリー(石飛幸治)の会話はとても親密感のある姉妹らしい演出になっているし、若いカップルであるリョーヴィン(仲原裕之)とキティ(関戸博一)の恋のさや当ても人情の機微をとらえた描き方になっている。最後に死に向かうアンナと、キティの出産で慌てふためくリョーヴィンを同じ舞台で描き、生と死を対比させるところはとてもよくできていると思った。しかしながら肝心なアンナの恋人ヴロンスキーが全然ハンサムな青年将校に見えない…というか、ただの優男みたいで、ワイルドな軍人らしい雰囲気がない。アンナともあまり息があっているようには見えなかった。これは前から思っていたのだが、日本の芝居って軍人、とくに若くてセクシーな士官のリアリティある造形についてはたいてい苦労している気がする。