プロジェクションがとにかくすごい〜ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!〜はじまりの巨人』

 ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!〜はじまりの巨人』を見てきた。宮城県にある烏野高校排球部が決戦に勝つため頑張る様子を、主人公の日向を中心に描くものである。原作のバレー漫画のほうは全く読んでいないのだが、今まで見た2.5次元舞台の中ではこれがたぶん一番とっつきやすいというか、とくに何もわからない状態で見てもわかりやすく楽しめる舞台だった。

 とにかくプロジェクションの使い方が凝っており、めまぐるしいくらいだ。背景にバレーボールのネットと漫画のコマを合わせて抽象化したような枠の背景があるのだが、そこが試合中の掲示板のような感じでスタメンの名前や点数を出すボードになったり、漫画のコマに見立てられて吹き出しが出たり、さらには後ろで過去の出来事が演じられる時間の違いを示すスクリーンとして機能したり、いろいろな役割を担っている。舞台中央の丸い箇所は回転するのだが、この上でバレーボールの試合に見立てたいろいろな動きでパフォーマーが飛んだり跳ねたり踊ったりする。役者陣の身体能力がかなり高く、宙返りなどをふんだんに取り込んだアクロバットみたいなダンスで最後は吊り物で選手が飛ぶなど、芝居というよりはサーカスみたいだ。プロジェクションが凝っているわりに人力での芝居っぽい表現も多く、黒子ならぬ白子がたくさん出てきて舞台をセットしたり、速い動きの残像を何人かで表したり、ボールがスローモーションで飛ぶところなどでは人がボールを操ったり、そのあたりの人力を用いた特殊効果はいかにも舞台らしい。ただ、見た目は非常に面白いのだが、後ろでプロジェクション、前ではこういう人力をフルに使用した動きが並行して起こるので、情報量が多くて疲れるところはある。

 プロジェクションの凝り方が尋常でない一方、話は試合の勝ち負けでシンプルだ。選手同士の心理戦で盛り上げるスタイルなので、よく原作を知らなくて馴染みやすい。ポスターに「バレー馬鹿」という言葉があったが、テニミュとかに比べると主人公が圧倒的に馬鹿キャラであるところはいいと思った。なんかもう超人やくざ集団みたいで中学生とは思えないテニミュとかに比べると、馬鹿キャラの主人公をはじめとして登場人物がみんな明るくてスポーツに賭ける情熱だけは誰にでも負けない高校生という感じなので、多少リアルなところがある。

 少し気になったのは女性キャラの扱いである。2.5次元に女性が出てくるんだと思ってちょっとびっくりしたのだが、台詞の女言葉が大変不自然で、あまり扱いはこなれてないなと思った。あと、序盤でマネージャーのことを高校生が「エロい」というところがあるのだが、舞台で女性を見て男性が「エロい」というのはもう禁止したほうがいいと思う。セクシーなキャラを出したいんなら、そんな説明的な台詞を言わなくてもセクシーに見えるようなじゃないと、舞台なんかやる意味ないだろう…