ちょっと撮り方が好みじゃなかった〜英国ロイヤル・オペラ・ハウス『マクベス』

 英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン『マクベス』を見てきた。演出はフィリダ・ロイドである。ヴェルディのオペラ版を見るのは初めてだった。

 マクベス夫人(アンナ・ネトレプコ)や、フリーダ・カーロのようにつながった眉のメイクで出てくる大勢の魔女たち非常に強烈だし、ベッドや人形、子役たちなどをうまく使ってマクベス夫妻の親密さと、殺人の後の夫婦の心境の乖離を示す演出が良かった。また、宴会や殺陣の場面では大がかりな金のカゴを使っていて、このあたりの豪華さも他のシンプルで暗い場面作りに比べるとメリハリがあった。ただ、全体的に撮り方がイマイチ好きになれないというか、歌っている歌手だけにフォーカスする撮り方で、舞台全体で何が起こっているのかよくわからないところが多かったと思う。とくに、マクベス夫妻のベッドが左右に分かれたまま配置され、そこに難民たちがなだれ込む場面はどういうわけだか舞台右側だけを撮っている時間のほうが長く、全体的な人の流れが大変わかりづらかったように思う。あと、マクベス夫人が亡くなった後のマクベスの反応があっさりしすぎていてトゥモロー・スピーチがないのは、あれはオペラ版ではカットされているということなのかもしれないが、大変物足りなかった。