話が男性中心に展開しすぎ〜『ガザの美容室』(ネタバレ)

 『ガザの美容室』を見てきた。

 パレスチナガザ地区にあるクリスティン(ヴィクトリア・バリツカ)の美容院を舞台にした物語である。女性たちがおしゃべりに興じていると外で戦闘が発生し、外に出られなくなってしまう。美容室内には結婚式の準備をしている花嫁や妊婦もいるのに、電気すら来なくなり、女性たちは立ち往生してしまう。

 こういう、紛争地域の女性たちにもお洒落とか噂話などの生活があるんだ…ということを描く映画じたいの意義はわかるのだが、話があまりにも男性中心に展開しすぎるので私はあまり面白いと思わなかった。一応、クリスティンと娘の宿題に関する会話などでベクデル・テストはパスするのだが、女性たちの噂話のほとんどが男に関するもので、女性たち同士の関係に関する会話とか、女だけで何かするとか、そういったことについての話があまりない(サフィアが政治の話をするところだけは少し面白いが)。またまた妊婦のファティマの扱いがかなりひどい。サフィアはわざと妊婦が怖がるようなことを言うし、停電で陣痛まで来ているというのに女性同士で協力して…というような雰囲気にはならないし、ずいぶんないがしろにされている。さらに、アシスタントのウィダドの恋人がケガをして美容室にかつぎこまれ、さらに美容室に男たちが突入して恋人が外に運ばれて終わり…ということで、いやいやふつうはこの妊婦のファティマの子供がどうなるかをオチにすべきだろ!女性ばかりの映画なのに結局男が死んだりとかしないと話が終わらせられないのかよ!妊婦無視かよ!とかなりやきもきした。監督・脚本はナサール兄弟が担当していて、あまりこういうことは言いたくないのだが、見ていて正直、かなり男性視点の映画だと感じた。

 さらに、これをほとんど美容室から出ないで撮っているあたりがまたつらい。ほとんど動きがなく、舞台劇みたいだ。舞台劇の映画化なのかと思ったが、違うらしい。