ユタ出張(4)ユタシェイクスピアフェスティヴァル、音楽の使い方がかなりイマイチな『ヘンリー六世第一部』

 ヘンリー・ウォロニッツ演出『ヘンリー六世第一部』を見てきた。

 全体的に、衣装とか小道具は中世風なのだが、音楽だけ現代のポップスを使っていて、それが全然有機的に場面に組み込まれていないので、見ていてけっこうイマイチだと思った。とくに大音量で音楽をかけるせいで台詞が聞き取りづらくなるところもあり(野外劇場だと台詞が拡散しやすくなるし)、音楽のせいでずいぶんわかりづらくなっていると感じた。

 唯一良かったのはトレイシー・レイン演じるジョーン(ジャンヌ・ダルク)で、銀の鎧に身を包んで颯爽と戦うところが魅力的だ。台詞回しも強力で、幻影を呼ぼうとするができなくなってしまったジョーンが失望する場面などは大変良かった。けっこうテクストはカットされており、最後にジョーンが命乞いをすべく、自分は妊娠していると主張していろいろな男性を自分の子供の父親としてあげるところはかなり短くなっていた。台詞をカットしているせいで、原作のトリックスターみたいな雰囲気が薄くなり、シリアスなキャラクターになっていたと思う。