とてもリアルなのに、ファンタジー~『エーデルワイス』

 ペヤンヌマキ脚本・演出、ブス会『エーデルワイス』を東京芸術劇場で見てきた。

 

 ヒロインはスランプ気味の中年の漫画家、アキナ(鈴木砂羽)である。アキナの現在の物語と、彼女の代表作『たたかえ!いばら姫』のヒロインで、おそらく若い頃のアキナの分身と思われるミユキ(藤井千帆)の物語が並行して語られる。ミユキは小説家志望のマサヤ(大和孔太)と一緒に暮らし、働いて金銭的に援助していたが、マサヤはミユキを裏切って家賃も払わない。一方でアキナは自作がドラマ化され、新しい恋も見つけるものの…

 

 現代日本の女性の暮らしをものすごくリアルに描いている一方、『眠れる森の美女』とか『サウンド・オブ・ミュージック』に出てくる「エーデルワイス」とか、古典を綺麗に取り込んでいて、大変面白いよくできた芝居である。右側に塔みたいなものがある現代劇にしては奇抜なセットが採用されているのだが、これは『眠れる森の美女』が全体のモチーフになっているからだ。全体的にリアルな物語と、セットやミュージカル風の歌、華やかなダンスなどを取り込んだファンタジー要素のバランスがとてもしっかりしている。ミユキもアキナもしょうもない男達とかかわってしまったり、ひどいセクハラを受けたりしてとても苦労するのだが、このへんの描き方は身につまされるところが多い。結局、アキナを起こしてくれる王子様なんていうのはいなくて、いばら姫は創作を武器にひとりで戦わなければならないのだが、でも、そういう人生にもいいところがあるんだ、というオチになっていて、後味もとても爽やかである。

 

 ただ、いくつかもうちょっと台詞をナチュラルにできるかなというところがあった。とくに冒頭のほうで、ちょっと女言葉がわざとらしくてかたく聞こえるところがあったので、最初からもっとかなりくだけた台詞を使うようにしたほうがいいんじゃないかと思った。それ以外のところでは、台本はとてもよくできていたと思う。