すごくよくできた上演だが、好みではない~『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』

 NTライヴでエドワード・オールビー作、ジェームズ・マクドナルド演出『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』を見てきた。

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 舞台は60年代初め頃のニューイングランドの大学町。大学教授のジョージ(コンレス・ヒル)と妻マーサ(イメルダ・ストウントン)が、有望な新人教員ニック(ルーク・トレッダウェイ)とハニー(イモジェン・プーツ)の夫婦をパーティ後に自宅に呼ぶ。深夜に酔っ払ったマーサとジョージはケンカを始め、どんどんエスカレートするが…

 

 台本もセットも演技も演出も大変よくできたプロダクションだというのはわかるのだが、個人的に全然好きになれなかった。おそらくアメリカ現代演劇特有のダークで長い家庭劇が全般に苦手なのと、あと自分の職業が大学教員なので、どうも60年代初頭のアメリカの大学があまりにものどかなところに見えてしまうというのがあるからだろうと思う。というのも、ジョージは歴史学者、ニックは生物学者なのだが、ディシプリン間でバカにしあったりするようなところはほとんどなく、多少大学の権力掌握について話すだけで、会話のほとんどは家庭生活の問題についてなのである。今の大学教員の話だったら、たぶんこんなに私生活のことばかりではいられない。たぶんこの2人が学内補助金の配分について殴り合ったりする芝居だったら私はもっと好きだったろうと思うのだが、まあそういう芝居ではないので仕方ない。