純粋と悲惨~『LULU』

 運良く招待して頂くことができ、赤坂レッドシアターでunratoの『LULU』を見てきた。小山ゆうな演出で、原作はフランク・ヴェーデキントの『地霊』と『パンドラの箱』(ルル二部作)である。この2作をあわせると大変長いのだが、テクストはかなり上手にカットしている。

 ヒロインのルル(霧矢大夢)は若く美しい女性で、周りの男たちは次々とルルのせいで破滅していく。ルルは自分を引き立ててくれた愛人だったシェーン(広瀬彰勇)と結局結婚するが、周りにちらつく男たちの影に嫉妬したシェーンとルルは仲違いし、ルルはシェーンを殺してしまう。取り巻きたちの助けで逃げ出したルルだが、最後は没落して売春することになり、切り裂きジャックの犠牲者となってしまう。

 普通にやるととてもミソジニー的な話になりそうなところだが、テクストをうまく編集し、ルルやゲシュヴィッツなどの女性たちに焦点をあて、プロローグなどの芝居がかったちょっとサーカスみたいな要素を強調しつつモダナイズすることで、ヒロインが男たちにモノ扱いされ、名前や経歴がどんどん変えられて幻想の対象とされていく様子を明確にしている。ルル自身はある種純粋とも言えるモラルの感覚を持って奔放に生きているのだが、あまりそういうことが男たちに理解されておらず、勝手な理想を投げつけられていくうちにどんどんルル自身が没落していく。唯一、ルルのことを多少はわかってくれそうなのは、ルルに献身的な愛情を捧げる伯爵令嬢ゲシュヴィッツ(紫城るい)で、彼女は劇中でどんな男よりも肝っ玉があると言われているくらいしっかりした女なのだが、それなのにあまりルルと理解しあえていない。最後にこの2人が同じ舞台の上で死んでいく様子はあまりにも悲惨だ。