ビル・ナイがブラッドベリ沼に!~『マイ・ブックショップ』(ネタバレあり)

 『マイ・ブックショップ』を見てきた。

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 1950年代末、ヒロインである戦争寡婦のフローレンス(エミリー・モーティマー)が保守的な田舎町で書店を始めるが、地元の有力者であるガマート夫人(パトリシア・クラークソン)が邪魔をし始め…という話である。正直、お話は実に淡々としていてそんなに面白いわけではない…というか、あんまり盛り上がらないし、ちょっと焦点があってない感じがする。田舎町が保守的だ、という話ではあるのだが、別にフローレンスの店が『ロリータ』とかブラッドベリなんかを売ってる先進的な店だから邪魔される、というのが主眼ではない。ガマート夫人が狙っているのはフローレンスの店が入っているきれいな古民家で、この物件をアートセンターにしたいという意図ゆえに追い出しをはかる。町の人たちが道徳的に保守的なので本屋をやりづらいという内容ではないのである。有力者が狙っていた物件を買ったせいで邪魔が入るというのは、別にこの町が田舎なのとはそんなに関係なく、都会でも起こりそうなことだ。コネを使ってフローレンスを追い出すガマート夫人の描写は、リアルといえばリアルなのかもしれないが、ヒロインがあまり法的に抵抗したりするわけでもないので、わりと淡々と悲惨に終わってしまってそんなに盛り上がらない。

 

 フローレンスが引きこもりのブランディッシュさん(ビル・ナイ)にブラッドベリを送り、ブランディッシュさんがブラッドベリ沼に引き込まれてしまうあたりは面白いし、口の減らない少女クリスティーンとフローレンスのやりとりなどはよく描けている(とはいえ、フローレンスがまだ小学生くらいのクリスティーンを手伝いに雇うのはあきらかに児童福祉案件で手入れが入りそうだと予測できるので、フローレンスはちょっと世間知らずすぎるように見える)。ベクデル・テストはクリスティーンの母とフローレンスのやりとりでパスする。