個人的に全くダメだった~『ビューティフル・ボーイ』(ネタバレあり)

 『ビューティフル・ボーイ』を見てきた。

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 実話に基づいた作品である。ライターのデイヴィッド(スティーヴ・カレル)の長男ニック(ティモシー・シャラメ)は、まだ十代の半ばなのにドラッグにはまってしまう。リハビリで一度はよくなって大学に進学したニックだが、また薬を始めてしまい…

 

 これ、個人的にぜんっぜんダメだった。まず全体に編集のスタイルが好みではない。こういう映画なら、デイヴィッドがいかに愛情を注いで小さな時から息子を育てたかを先に見せてからニックの中毒を描くべきだと思うのだが、ミョーに時系列をいじっているせいで、父子関係がもともとどういうものだったのかがわかりづらくなっている。さらに切り返しの使い方とか人を撮る角度とかに変なクセが感じられ、デイヴィッドが薬物中毒の女の子とレストランで話すところとか、何を表現したいのかわかりづらい撮り方だと思った。

 

 さらにニックを演じるティモシー・シャラメがボロボロになっていく様子を中途半端に美しく撮っているのが良くないというか、完全に個人的な趣味だがちょっと受け付けられない。薬物中毒というのは基本、病気であるはずだ。美しい人がつらい病気にかかるところをロマンティックに描くというのは、病気の美化につながる。終盤でトイレで薬を打って倒れるニックを、光をあててまるでカラヴァッジオみたいに撮っているのはちょっとどうかと思った。さらにこの題材でニルヴァーナの曲なんかを使っているあたり、勘弁してくれという感じである。

 

 なお、この作品はベクデル・テストはパスしない。