大変よくできた作品だが、好きかというと…『魂のゆくえ』(ネタバレあり)

 ポール・シュレイダー監督『魂のゆくえ』を見てきた。

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 主人公はファースト・リフォームド教会のトラー牧師(イーサン・ホーク)である。息子を失い、自らも病気の兆しに苦しむトラー牧師は日記を書き始める。ある日、妊娠中の信徒メアリ(アマンダ・セイフライド)が相談にやってきて、環境保護活動家である夫のマイケルが地球の気候変動や環境汚染をあまりにも苦にしていて子供を欲しがっておらず、落ち込んでいるので話し合ってほしいと言ってくる。トラー牧師はマイケルの相談に乗ろうとするが、マイケルは自殺してしまう。環境汚染を糾弾せず、汚染に加担する企業に取り入る教会にトラーは疑念を抱き始めるが…

 

 大変力の入った作品で、深刻なテーマを真っ正面から非常にうまく扱っており、イーサン・ホークの演技も素晴らしい。アメリカの教会の腐敗を厳しく批判する一方、人生に疑問を感じている男の魂と信仰にしっかり向き合った作品でもあり、社会的かつ個人的な映画だ。ただ、好きかというとまた話は別だ。私はシュレイダーのどうも『タクシー・ドライバー』っぽい思い詰めた息苦しいところが前からちょっと苦手なのだが、この作品も超『タクシー・ドライバー』っぽい…というか、トラヴィスのかわりにトラーがいて、アイリスのかわりにメアリがいるだけなのでは…っていう気もする。

 

 なお、この作品はベクデル・テストはパスしない。