リアリズムは要らない~ドン・キホーテプロジェクト『リア王』

 綾瀬のKISYURYURI THEATERでドン・キホーテプロジェクト『リア王』を見てきた。珍しく招待で見た。

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 工場の建物を再利用した劇場で、ほとんど何もない部屋でやる『リア王』である。窓から自然光をとっているのだが、終盤は窓まで血まみれになったり、シンプルながらけっこう演出は工夫されている。綾瀬だからなのか何なのか、全体的にちょっと庶民的でガラの悪い感じの『リア王』だ。

 

 ただ、肝心のリア王にかなり問題がある。まず、リア王にしてはちょっと役者が若いように思った。それだけならまあいいのだが、台詞回しがものすごくボソボソしていて、部屋の奥に向かって話すところなどはかなり聞き取りづらくなる。なんかテレビみたいなリアリズムふうの演技なのだが、リアリズムにのっとらない形で作られた舞台の戯曲なんだから、リア王はもっと長い台詞をはっきりろうろうと言うようにしないとダメだろうと思う。この芝居にはもっとわざとらしさが必要だ。リアリズムっぽくするとかえってしみったれた感じになる。

 

 あと、これは内容とは全く関係ないのだが、舞台裏のことで、トイレの向かいにある台所は片付けたほうがいいと思った。トイレが非常にわかりづらいところにある上、手を洗う場所がなく、私はうっかり手を洗うところと間違えて向かいのキッチンに入ってしまったのだが、そこがものすごく汚くて、食事をした後の皿とかがたくさん積んである上、排水溝にたばこの吸い殻がつまっていた。さらにそこにおそらく芝居で使う?と思われる泥のようなものが無造作に置かれていたのだが、これは後でエドガーがトムに変装する時につけるやつだとわかった。お客に見えるところに食べ物と芝居で使う道具をごっちゃにして置いておくのはちょっとどうかと…