真面目なノラ、色気のあるトルヴァル~『人形の家Part 2』

 ルーカス・ナスの戯曲『人形の家Part 2』を見てきた。これは事前に戯曲を読んで解説記事を書いたので、招待で行ってきた。

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 解説記事で書いたように、これはイプセン人形の家』の15年後を書いたものである。ノラ(永作博美)が離婚のために戻ってきて、元夫のトルヴァル(山崎一)、娘のエミー(那須凜)、家政婦のアンネ・マリー(梅沢昌代)と再会する。この4人の会話だけで成り立つ作品である。

 解説でけっこう詳しく書いたのであまり戯曲じたいについて言うことはないのだが、内容はかなり面白いというか、『人形の家』とその周辺作品、時代背景などをよく研究した戯曲で、続編としてはとてもうまくできている。演出も手堅くまとめていて、会話をじっくり見せる感じだ。永作博美のノラが非常に良い。

 栗山民也演出の特徴として、手堅くてよくできている一方、あまり冒険がないということがあり、この『人形の家』も手堅すぎて「そこもうちょっとはじけてもいいのでは」と思うところがいくつかあった。いくつか笑うところはあるのだが、基本的に登場人物が皆かなり真面目である。ノラは真面目だし、エミーはちょっと若い娘にしては厳しすぎるのではと思うくらい真面目だ。もうちょっとリラックスして、いろいろなところで笑わせてもいいのではと思う。

 ただ、面白いのは山崎一のトルヴァルがかなり魅力のある中年男性になっているところだ。四角四面な真面目人間ではなく、劇中でも言っているように、近所の寡婦のひとりやふたりトルヴァルによろめいてもおかしくなさそうな感じのけっこう色気のあるおじさまに作ってある。この色っぽいおじさまが後半、取り乱すあたりの演技は大変良かった。