私が好きではないテネシー~『男が死ぬ日』

 テネシー・ウィリアムズの西洋能『男が死ぬ日』を見てきた。三島由紀夫テネシー・ウィリアムズの交流の産物だというお芝居である。

 タイトルどおり、男性の画家が自殺するまでを描いた作品である。主要登場人物は画家、愛人、東洋人で、それ以外に後見が出てくる。画家と愛人はアメリカから来ていて、日本のホテルに滞在しているという設定であり、いわゆるウィリアムズがよく書いていたホテル劇の一種だ。東洋人のキャラクターが三島由紀夫にヒントを得ているらしいのだが、画家は明らかにジャクソン・ポロックである。

 全体的になんとなく面白いと思えなかった…というか、私が苦手なほうの息苦しいテネシー・ウィリアムズである(別にウィリアムズが全部嫌いというわけではないのだが、密室的で息苦しいやつはあまり好きでは無い)。このポロック風な画家の愛人の女性の描き方がどうもステレオタイプに感じられたからである。カトリックで先妻がいる画家と正式に結婚できず、肉体的魅力で画家をつなぎとめている女性なのだが、途中で他にも人生でいろいろできたかもしれないのにあなたに全てを捧げたのに一切法的権利がない、みたいな不満をぶつける。完全に個人的な好みだが、私はこういう男性社会で男性ひとすじに生きてきた女性の戦い…みたいな話を全く面白いと思わないので、まあ趣味にあわないということだと思う。どうもこの女性のモデルはポロックの妻で自身も画家だったリー・クラズナーらしいのだが、クラズナーは本人も才能があったのにかなり夫の影に隠れてしまった女性である。そう考えると余計興ざめな感じがして、あんまり面白いと思えなかった。