このクマを見逃してはいけない!!驚愕のクマ&サウナ映画『サウナのあるところ』(ネタバレあり)

 フィンランドのドキュメンタリー『サウナのあるところ』を見てきた。フィンランド文化の重要な一部であるサウナにたむろす男達を撮った作品である。

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 フィンランドにおけるサウナ文化の説明とかは一切なし、登場人物の紹介すらなく、いろいろなところにあるサウナに入った男たちが語り合う様子をひたすら撮った作品である。日本みたいに公衆浴場的なものが文化に根付いている国ならすっと見られると思うのだが、ひょっとするとそういう文化がない国ではわかりづらいのでは…と思うくらい説明がない。当たり前だが全員全裸で、しかもお話の内容はたいへん深刻なものも多い。おそらく監督はかなり出てくる人たちと丁寧に打ち合わせて撮ったと思われるので、ドキュメンタリーとはいえ「あるがままを撮る」作品ではない。その点では、事実に根ざしてはいても一応台本的なものもあるドキュメンタリー演劇に近い映画かもしれない。

 

 テーマは「男らしさ」の規範で、男達はサウナに入ってリラックスし、他の場所ではなかなか話せないような人生の悩みなどを語る。大変深刻な話も多く、虐待を受けた経験とか、離婚して子供に会えない苦しみとか、家族の者が亡くなったとか、話すだけでつらくなって泣いてしまう人もいる。人前で泣くことは男らしさの規範で良くないこととされているが、サウナのロウリュ(蒸気)の中では汗と一緒に心が浄められ、普段は出せない感情も出せてしまう。これこそ一種のカタルシスかもしれない。

 

 そういうわけで大変真面目なよい映画なのだが、一方で驚愕のクマ映画でもある。途中で「警察から頼まれて親のいない子供を引き取った男」が出てくるのだが、話しているうちになんとこの「子供」はクマで、彼はクマと一緒に暮らしているということがわかるのである!子グマの時にサウナに入ってきたこともあるそうで、もちろん本人…じゃなかった、本熊も登場する。クマに興味がある人は全員、この映画を見るべきだ。