個人的な理由で全然好きになれなかった…東京芸術劇場『ミクスチュア』(ネタバレあり)

 東京芸術劇場で贅沢貧乏『ミクスチュア』を見てきた。台本の出来とかとは全く関係なく、個人的にかなり好きになれなかった。

 とあるスポーツセンターに集う人々を中心に、現代日本に生きる人々の葛藤とか悩みとかを描いた作品で、台本じたいは非常に考えられていると思うし、やりたいこともわかる…のだが、完全に趣味の問題で面白いと思えないところがあった。なぜかというと、この話は「野生動物」がスポーツセンターの周囲に出没して危険だ、というのが話の大きなポイントになっている。この野生動物が死んでしまうことにより、人々の間に存在する理想と現実の乖離とか、建前と本音の差とか、経済格差などがあぶり出されていくのだが、私が気に入らなかったのはこの「野生動物」が何なのかが意図的に明示されていないことだ。この野生動物は、この芝居では象徴的な意味を追わされており、わざとぼかしてあるというのはわかるし、たぶん東京に住んでいる観客に見せるのであればこれでいいのだとは思う。しかしながら私はキツネやシカがフツーに出没し、アライグマが畑を荒らし、近くのは山にはクマもいるらしいとかいう田舎で育った。今年も熊害のニュースがたくさん出てきている北海道人からすると、このものすごく象徴化された「野生動物」の描き方があまりにも生ぬるいというか、現実に田舎で野生動物と遭遇する危機がある人に見せる芝居ではないように思った。これは完全に私の趣味の問題で、芝居じたいの出来は悪くないと思うのだが、どうも好きになれなかった。