オールメールを上手に使った演出~カクシンハン『ロミオとジュリエット』

 カクシンハン『ロミオとジュリエット』を見てきた。ポケット公演ということで、3人の役者を使い、オールメール、60分くらいで『ロミオとジュリエット』をやるというものである。

kakushinhan.org

 舞台はそこらじゅうに新聞紙がまき散らされ、衣類をかけるフックとか時計などが点在している。ちょっとダリとかダミアン・ハーストみたいなシュールレアリスム、現代美術っぽいセットだ。2017年の『マクベス』同様、相変わらずゴミみたいな舞台美術だが、内容はゴミではない

 60分で稲妻のように突っ走る展開で、疾走感があり、とても面白かった。ロミオが岩崎MARK雄大、ジュリエットが渡部哲成、ナレーションや乳母などの役が大山大輔である。渡部哲成は前回のカクシンハンのプロダクション『薔薇戦争』ではボーナ役でブスネタでいじられており、別にカワイイじゃんと思った私はあまりあのジョークは好きではなかったのだが、今回は髭面でとことん可愛いジュリエットである。恋のせいでウキウキして強くなったり弱気になったり嬉しくなったりを繰り返すジュリエットの表情がくるくる変わり、実に愛らしい。一方、ロミオ役は女役も得意な岩崎MARK雄大で、若々しい優男になっており、このカップルはかなりアンドロジェナスな恋人同士である。男同士のようでもあり、二人とも女の子っぽい時もあり、性別が一定しないように見える時もあり、オールメールのキャスティングをとても上手に使っている。ロミオとジュリエットがかなり初々しい一方、深みのある声の大山大輔は大変、大人である。前にカクシンハンが『ロミオとジュリエット』をやった時も乳母がジュリエットの死をロミオに伝えに行っていたが、今回も同様の変更をしており、この演出はなかなかいいと思う。