『ミーアキャットの世界』みたいな…『ライオン・キング』(2019)

 『ライオン・キング』(2019)を見た。1994年のアニメ映画のリメイクである。

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 物語はほぼアニメの原作と同じで、ライオンの王である父ムファサ(ジェームズ・アール・ジョーンズ)を殺されたシンバ(ドナルド・グローヴァー)が紆余曲折の上、簒奪者である父の弟スカ-(チュイテル・イジョフォー)に復讐して王になるまでを描いた作品である。CGを活用してホンモノみたいな「実写」の動物と風景を作りあげており、技術的には非常に革新的だ。

 と、いうことで、とてもリアルな動物の比較的自然な動きが特徴の作品なのだが、そのせいでなんか動物ドキュメンタリーに勝手に人が声をあてているみたいで、ミーアキャットの生態に昼メロ風の声をあてた『ミーアキャットの世界』を思い出してしまった。さらに、話が完全に『ハムレット』ばりの宮廷陰謀劇で、『ミーアキャットの世界』よりもずいぶん人間社会準拠なのが問題だ。アニメや舞台の時はけっこうデフォルメされていて美的なわざとらしさとでも言うべきものがあるのでわりと気にせず見ることができたのだが、これだけ「実写」らしいリアルさで見るとなんだか非常に不自然というか、しっくりこない感じがある。こういうものをこれから何本も見れば慣れるのかもしれないが、現状ではものすごく大仰な『ミーアキャットの世界』を見た、というような印象だ。

 

 声優陣は皆とても良く、とくにシンバのガールフレンドである雌ライオンのナラの声をあてているビヨンセはさすが女王という感じだ。ナラとサワビの会話でベクデル・テストはパスする。あと、プンバァがセス・ローゲン、ティモンがビリー・アイクナーなのだが、アメリカで『隠し砦の三悪人』をリメイクするならこの2人に太平と又七をやってもらうといいのではと思った。