高評価なのはわかるのだが、あまり好みではなかった~『第三夫人と髪飾り』

 『第三夫人と髪飾り』を見てきた。ヴェトナムの女性監督アッシュ・メイフェアが自分の曾祖母の話をヒントに作った映画である。

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 舞台は19世紀の北ヴェトナムである。ヒロインのメイ(グエン・フオン・チャー・ミー)は14歳で大きな絹業者の第三夫人として嫁ぐことになる。第一夫人のハ(トラン・ヌー・イエン・ケー)には息子が、第二夫人のスアン(マイ・トゥー・フオン)には娘がいる。メイはすぐ妊娠するが…

 

 ロケをふんだんに使い、自然の映像を織り込んでとにかく綺麗に撮った作品だ。一夫多妻制の中で暮らす女たちが直面する不条理を丁寧に描いており(ベクデル・テストは妻同士の会話などでパスする)、完成度としては高い…と思うのだがおそらく個人的な趣味の問題で私は全く好きになれなかった。

 まず、綺麗さ重視であんまりカットがつながっていないみたいなところがあるのが良くない。顕著なのが冒頭のメイの結婚式の場面で、カットが変わるとメイが来ているショールのかぶり方が微妙に違う。やたらとゆっくりした映画であるわりには、なめらかな時の経過とか登場人物の自然な動きを意識したスムーズな編集になっていないところがある。

 それから、これだけの大家族を描いているのに冒頭部分で誰が誰だとかいう紹介がほとんどないまま始まり、結局ひとりひとりの女たちがどこから来たのか、どういう経緯でこの一家の妻になったのか、といった背景が全く描かれないのも好みではなかった。最後まで、なんでメイが14歳で第三夫人になったのかは全くわからないのである。たぶん、わざと背景を捨象してヒロインの経験を直接的かつゆっくり描こうとしたのだろうが、個人的にはこういう背景描写に欠けた歴史ものはあまり好きではない。

 それから、女性たちの苦労がわりとフェティッシュ化というか、エロティックに美化されているようなところもあんまり好きではなかった。14歳のメイが初夜を迎える場面で、メイは後ですごく痛かったと言っているのだが、ここが妙にエロティックに表現されている。初夜のセックスの場面がカイコが這い回る場面に変わるという編集になっていて、このカイコは折々で出てきてだんだん繭になっていくのだが、このカイコの描写が入るせいで、メイは初夜を経験することでエロティックに成長した、みたいな印象を与える。ここだけならまあいいのだが、全体的にこういうなんでもエロティックに魅せるところが多く、言っては悪いがいかにも西洋の映画祭でウケそうな描き方に思えた。東洋の女性の苦労を美しくエロティックに、というのは、まあそれは西洋の批評家にはウケるだろう。私はあんまり好きでは無いが。

 全体的に、別につまらないとか出来が悪いとかではないのだが、あまり私の好みではなかった。同じような題材なら、中国の一夫多妻制を描いたチャン・イーモウの『紅夢』のほうがずっと面白いと思う。