ナイロビのジュリエットとジュリエット~『ラフィキ:ふたりの夢』(ネタバレあり)

 『ラフィキ:ふたりの夢』を見てきた。ケニアの映画で、監督はナイロビ出身の女性監督ワヌリ・カヒウである。

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 ヒロインのケナ(サマンサ・ムガシア)はナイロビに住む若者で、看護師を目指している。両親は離婚しており、別居している父親は選挙に立候補中だ。ケナは父の対立候補の娘であるお洒落なジキ(シェイラ・ムニヴァ)に出会い、だんだん親しくなっていく。しかしながら対立候補の娘同士、しかもケニアでは同性愛が違法ということで、愛し合う2人の前途は暗く…

 

 政治がらみで対立している一家の子供同士が恋に落ち、悲惨な運命によって引き裂かれるという、まるで『ロミオとジュリエット』みたいなティーンの恋愛ものである。ものすごく古典的な設定だが、ナイロビの若者文化を背景に現代的かつ生き生きと2人の恋が描かれている。ケナもジキもちゃんと奥行きのある登場人物で、とくにケナには両親の離婚や将来への野心など、いろいろな問題があり、あまり心が安まる暇が無い様子がリアルに描かれている。一方でジキはめちゃくちゃオシャレで、カラフルな髪型といいポップな洋服といい、とにかくセンスが良くて可愛く、ケナが心惹かれるのもよくわかる(ベクデル・テストはもちろんパスする)。途中で2人がひどい差別を受けて別れさせられるところは相当ショッキングだが、おおもとの『ロミオとジュリエット』とは違い、最後は希望のある終わり方になっているところがいい。同性愛者の若者が不幸になって終わるだけの悲しい話ではないのである。ジュリエットとジュリエットは引き裂かれても愛し合い、再会することができた。あまりにも楽観的な終わり方といえばそうだが、それでも長調の和音で終わっているところは爽やかさがある。