台本や演技は面白いのだが、照明が…『BLACK SHEEP』

 ウッディシアター中目黒で、ご招待を受けて福山桜子台本・演出の『BLACK SHEEP』を見てきた。井出卓也のひとり芝居である。

 心理学者をやめて歌舞伎町で一人暮らしをしている千が、警察から捜査協力依頼を受けるところからはじまる。千は人の嘘を見抜く研究が専門で、ちょっとばかりシャーロック・ホームズとか『ライ・トゥ・ミー』のカルみたいなところのある人物である。ホストクラブで発生した不自然な死について捜査協力を頼まれ、しぶしぶ手伝うことになる千だったが、そこでサルトルというホストと親しくなり…

 

 ひとりでとっかえひっかえいろいろな役をやるのだが、台詞は片方の人物がしゃべっている内容しかわからず、つまりやりとりの全体については観客が想像するしかないというものになっている。時系列なども必ずしも直線的ではないので最初は多少混乱するところもあるかもしれないが、そんなに難解な芝居ではない。井出卓也は大変頑張っており、ひとりで90分、すごくしっかり舞台をもたせていた。千に同じようなことが二度も起こるという落とし方はちょっと強引な気もするし、慶應義塾大学における講師の地位はああいう描き方でリアルなのか…?という疑問はあるのだが、そこを除くと台本じたいはそんなに悪くなく、面白いところもたくさんある。最初は柱しかなかったセットがどんどんテープでぐるぐる巻きにされていくというちょっと特異なヴィジュアルもなかなか雰囲気がある。

 

 ただ、照明が圧倒的に劇場にあっていないと思った。かなり光の強い照明をやたらと動かす演出があるのだが、こんな小さい劇場でやると観客のほうは相当にまぶしく、ひとり芝居なのに役者の表情がよく見えなくてけっこうなフラストレーションがたまる。これだけはちょっとどうかと思った。