撮り方が趣味じゃない~『WAVES/ウェイブス』(ネタバレあり)

 『WAVES/ウェイブス』を試写で見てきた。

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 二部構成になっている映画で、前半の主人公は兄のタイラー(ケルヴィン・ハリソン・Jr)、後半の主人公は妹のエミリー(テイラー・ラッセル)である。しばらく公開が先なのであまり詳しいことは書かないが、フロリダのアフリカ系アメリカ人ミドルクラス家庭の崩壊と再生を描く物語である。

 

 脚本とか演技などは大変しっかりした作品で、つまらないとかいうことは全くない。後半のルーク(ルーカス・ヘッジズ)が出てきてエミリーと付き合い始めるあたりの展開はとても良かった。ルークはレスリング選手なのだがとても大人しくてちょっとシャイというステレオタイプを裏切る感じのキャラクターで、ヘッジズが静かな演技でとても巧みにルークの性格を表現しているし、エミリーを演じるラッセルとの相性も抜群だ。

 

 しかしながら、これは完全に個人的な趣味の問題なのだが、とにかく私はこの映画のヴィジュアルスタイルが好きではなかった。なんだか初めて「バリー・ジェンキンズから悪い影響を受けた映画」を見たような気がするのだが、内容はけっこう王道のミドルクラス家族劇なのに(『普通の人々』とか『アイス・ストーム』なんかに近いかもしれないが、場所が南のマイアミで非白人の家庭が舞台というところは新しさがある)、撮り方がキザなくらい凝っているのである。音楽がずっと鳴りっぱなしなのはまあスタイルだからいいと思うのだが、やたら眩しい光を使っているあたりや、人間を水に落としたがるところは明らかに『ムーンライト』っぽい。それだけならまあいいのだが、盛り上げたいところではやけに凝った感じのカット割りにしたり、カメラを激しく動かしたりしていて、たまにすごくせわしない印象を受ける。さらに、とくに第1部では手持ちでやたらカメラを動かすということをやっており、これは手ブレが苦手な私としては大変つらかった。このブレブレ手持ちに閃光みたいな光が入るせいで、たまにけっこう物理的に気持ち悪くなった。いい映画ではあるのだが、頭痛持ちとか手ぶれが苦手な人には全くおすすめできない作品である。