舞台を現代にすると途端にアルジーとジャックがイヤなやつに~『まじめが肝心』

 恵比寿のエコー劇場で『まじめが肝心』を見てきた。文化庁海外研修の成果公演だそうで、演出家の大澤遊をはじめとして海外研究に行ってきたスタッフがかかわっている。ワイルドの人気作だが日本ではそんなによく上演されるわけではないので、ちょっと心配していた…のだが、十分笑いのツボをおさえたワイルドで、非常に良かった。

 演出上、重要なのは設定が21世紀の今になっているということだ。この芝居は19世紀末のロンドン社交界が舞台なのだが、衣類や小道具、時事ネタなどは全部今に変わっており、スマホが出てきたり、Brexitの話が出てきたりする。美術は緑などを基調にしたポップだが落ち着いた感じのもので、親密でくつろいだ雰囲気のロンドンのアルジーの家と、明るい光に溢れた田舎のジャックのお屋敷の対比も良い。全体的に、モダナイズのやり方といい、美術のこだわりといい、「海外研修の成果」らしいところがずいぶんよく出ていると思った。ジョークもどれも面白く、ロンドンのオフウェストエンドあたりでやっていてもおかしくないような感じのワイルドなのだが、それでもちゃんと日本人にわかるようきちんと仕上げていて感心した。

 『まじめが肝心』はそのままでも十分、辛辣な諷刺劇なのだが、設定を現在にするとジャックやアルジーがめちゃめちゃイヤな奴になるんだな…と思った。ジャックはあまり政治に詳しくなさそうなのだが(いや、だからこそ)Brexit党に投票したらしいし、基本的に2人ともオックスフォード出で不労所得で遊んで暮らしているろくでもない上流階級のご子弟どもである。19世紀という設定ならダンディに見えるアルジーとジャックが、デヴィッド・キャメロンとかボリス・ジョンソンとかジェイコブ・リース=モグくらいは不愉快な人に見えてくる。しかし、ひょっとすると19世紀にリアルタイムでこの芝居の初演を見ていた人たちもこのくらいはアルジーとジャックのことをイヤな奴だと思っていたのかもしれないという気もしないではないので、それはそれでいいと思う。