よくできたお芝居だが、改善の余地あり~『ダンシング・アット・ルーナサ』

 劇団俳小の公演で、ブライアン・フリールの『ダンシング・アット・ルーナサ』を見てきた。フリールのオリジナルのお芝居をちゃんと生で見るのは初めてである。

www.haishou.co.jp

 話は全体にマンディ家の5人姉妹の末娘クリス(西本さおり)の息子であるマイケル(原田翔平)の回想の枠に入っている。1936年のドニゴールの田舎、バリーベグの外れにある家にマンディ家の5人姉妹が住んでいるのだが、全員未婚で貧しく暮らしている。長男のジャック神父(渡辺聡)はウガンダハンセン病の看護をしていたが、久しぶりに病気で帰国している。長女のケイト(吉田恭子)は学校の先生だが、厳格で融通のきかないカトリックだ。次女マギー(荒井晃恵)は明るい性格で、アグネス(須田晶子)は知的障害のあるローズ(寺脇千恵)と手袋を作って収入を得ている。クリスは未婚の母で、マイケルを育てている。世の中が変わるにつれて、一家がだんだん崩れていく様子を描くものだ。

 

 アイルランドの田舎の家を模したセットなどはかなりしっかりしているし、演技もとてもちゃんとしている。このお芝居の面白いところは、登場人物が全員、何らかの要因で目が曇っていて、そのせいでアイルランドの村落にも押し寄せるグローバリゼーションの波に対応できなくなってしまうというところだと思う。全体がマイケルにより回想形式になっているのは、後から順番に整理して思い出すみたいな形にはめることで、そういう登場人物の記憶や人気のあやふやさを強調しているのかなと思った。

 ただ、いくつか疑問なところはある。まず、成人したマイケルの衣類があまりにも21世紀風で、到底1950年代くらいの若者には見えないという問題がある。これは何か意図があるのかもしれないが、そうだとしても全く効果があがっておらず、見ていて混乱するだけになっているので良くない。また、ケイトが買い物をしてくる場面で、商品のパッケージがあまりにも新しいデザイン(プラスチックだったりする)なのは全くいただけない。それから全体的に音楽はもっと気を遣ったほうがいいと思った。アイルランドには歌や踊りのうまい人がごろごろいるし、田舎の姉妹とはいえもっと歌はうまいのでは…という気がする。