ダンスはとても綺麗だが、ロミオのぴっちりタイツが問題だと思う~バレエ映画『ロミオとジュリエット』

 ロイヤル・バレエによるバレエ映画『ロミオとジュリエット』を見てきた。

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 プロコフィエフの音楽にケネス・マクミランが振り付けたロイヤル・バレエの定番作品である『ロミオとジュリエット』を映画化したものなのだが、最近流行りの舞台を撮ってそのまま上映するものではなく、ハンガリーの野外時代劇スタジオなどでロケをして撮ったというもので、けっこう「映画」らしい映画である。音楽はずっとかかっているのだがバレエだけあってもちろん台詞はないので、ちょっとサイレント映画みたいである。

 

 もちろんダンスは大変綺麗だし、演技も悪くない。パーティの場面などはなかなか壮観だ。ジュリエット役は最近『キャッツ』(未見だけど)に出ていたフランチェスカ・ヘイワード、ロミオ役はウィリアム・ブレイスウェルで、若々しく初々しい恋人同士を上手に表現している。パーティの最中にジュリエットがリュートを弾き、それを見たロミオがちょっとおどけて踊りながら恋心を表現するあたりはとても可愛らしい。ティボルト(マシュー・ボール)やマキューシオ(マルセリ-ノ・サンベ)も生き生きしており、全体的に若者たちの愛らしさと悲劇がよく出ている。全体的に本当にルネサンスの街らしい場所で撮っているため、ふつうの舞台のバレエにはない臨場感がある。

 

 しかしながら私がちょっと問題かなぁと思ったのは、このリアルさのラインがどこまで舞台でどこまで映画なのかということだ。私はこの作品を何度かイギリスで見ているのだが、舞台ではふつうロミオやマキューシオ、ベンヴォーリオなどよく動く踊りをする若者たちはお尻にぴったり張り付く白っぽいタイツをはいていて、かぼちゃパンツの類ははいていない。舞台の上だと「これは舞台だから」ということでものすごく不自然なものでも平気で受け入れてしまう心が働くので、若者たちがお尻ぴっちりタイツをはいて歩いていてもあまり気にならないのだが、かなりリアルな街の戸外でこれだけぴっちりタイツの若者たちが歩いているとなんとなく不自然である。タイツの色が白いせいでアメコミヒーローのぴっちりパンツなどよりもさらに尻尻しく、下手するとロミオだけ外でケツ出してる変な人みたいに見えなくもない。このロミオたちの衣装が最も顕著な例なのだが、全体的にロケなどけっこう映画らしいリアリティを追求しているところがある一方、衣装とか細かいところはそのまま舞台から持ってきているので、ちょっと不自然に感じられるところがいくつかあった。