ロック・アゲインスト・レイシズムの活動をわかりやすくとらえたドキュメンタリー~『白い暴動』

 『白い暴動』を見てきた。1970年代半ばにイギリスで盛り上がったロック・アゲインスト・レイシズムについてのドキュメンタリー映画である。

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  1970年代半ばにイギリスで極右政党である国民戦線が活発に活動し、さらに有名なミュージシャンがファシズム的発言や人種差別発言をしたことに抗議して組織されたロック・アゲインスト・レイシズムの活動を丁寧に追ったもので、あまり背景をよく知らなくてもわかるよう、当事者インタビューに当時の生々しい差別事例などを組み合わせてしっかりした構成にしている。また、ロック・アゲインスト・レイシズムが発行していたニューズレターである『テンポラリー・ホーディング』はいろんなものを切り貼りしたみたいないかにもパンクのDIY感あふれる紙面だったらしいのだが、画面の作り方などもそういう美学を反映したものになっている。なお、日本語版のプログラムはわりと情報が多いのだが、同じような切り貼りDIYっぽい作りになっている。

 面白いのはシャム69の立ち位置だ。シャム69はいかにも不満に満ちたワーキングクラスの若者という感じのバンドで、右寄りのスキンヘッドのファンが多かったらしいのだが、ギグを運営する側はそういうバンドにロック・アゲインスト・レイシズムに来てもらって人種差別主義を批判してもらうことによって運動の効果を高めようとしたらしい。このファンとバンドの立ち位置の違いというか、距離感の説明は興味深かった。