原作準拠のわかりやすいミュージカル~『高慢と偏見』(配信)

 今日から新型コロナウイルスで劇場が閉鎖された代替として配信されている芝居をレビューしようと思う。第一弾はミュージカル『高慢と偏見』にする。

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 これは言わずと知れたジェーン・オースティン原作の古典の翻案で、ポール・ゴードンによりミュージカル化された作品である。シアターワークス・シリコンヴァレーのプロダクションで、2019年12月から2020年1月にかけてパロアルトのルーシー・スターン劇場でロバート・ケリー演出により上演された。ストリーミングは4/10に時間を決めて3回実施された。

 正統派な感じの作品で、美術や衣装もリージェンシー風だ。ただし、とくにヒロインであるリジー(メアリ・マティソン)のドレスを中心に、19世紀初頭にしては動きやすい形にしてあるという印象は受けた。とくにリジーがネザーフィールドに歩いて行く時に着るコートなんかは現代女性が近所に買い物に出かける時のコートだと言われてもおかしくないような実用的でしゃれたデザイン(+ベネット家の経済状態を象徴する感じであまり高くなさそう)で、このあたりはわざと現代的にして親しみやすくしているのだろうと思った。

 お話は相当に原作準拠で、台詞についてはかなり小説からとってきている。有名な冒頭部分がそのまんまお芝居の幕開けの台詞になるなど、地の文についても有名なところは登場人物が説明とか心の声みたいな感じで言ってくれる。ただし2時間15分程度の長さであるため、わりとカットはある。

 ずっと音楽が流れている感じのミュージカルなのだが、台詞中心の時もあまり邪魔にならず、全体としてお話の軽妙で洗練されたタッチに貢献していると思った。歌については登場人物の心情とか展開について詳しく表現するような内容のものが多く、お話を止めてしまうようなところもなくてスムーズだ。笑いのツボも押さえているし、ミュージカルとしてはかなりわざとらしさがないほうだと思うので、初心者向けで非常にわかりやすく、楽しい作品だと思った。