こういう上演ってすごく撮りにくいのでは?~SPAC『アンティゴネ』(配信)

 配信でSPAC『アンティゴネ』を見た。2017年にアヴィニョン演劇祭で上演された宮城聰演出のプロダクションの撮影である。ふじのくに野外芸術フェスティバルで上演予定だったものが中止となったので、上演予定期間だけ無料配信されている。

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 言わずと知れた有名ギリシア悲劇の翻案である。法王庁の中庭に水を張って行うという上演のヴィジュアルは雰囲気があるし、音楽の使い方などは面白いのだが、実は私はあのク・ナウカ方式というか、動く人と話す人を分けるという芝居のスタイルが決定的に苦手で、個人的な好みとして楽しめない。ああいうものを面白いと思う人がいるのはまあなんとなくわかるし、完全に趣味の問題だと思うのだが、少なくとも私はストレートプレイについては役者が動きながらしゃべる技術を楽しみたくて見に行っているところがあるので、興味が持てない。しかしながらこういうふうに無料で配信されると、評判になっているプロダクションだし後学のために見ようかという気になるので、まあそれはよかった。

 あと、ひとつわかったのは、こういうでかい舞台で野外で夜、さらに話す人と動く人を分けるような上演というのは大変、撮影がしにくいということだ。何しろふつうにその場で見ている時ですら、お客さんも動く人と話す人のどっちを見ればいいのかよくわからないところがあり、素早く視線を切り替えないといけないこともある。カメラは引きでできるだけ舞台全体の様子がわかるように撮っていてこれは正解だと思うのだが、そうなるとたまに演者が小さすぎて表情や細かい動きがよくわからなくなる。これはなかなか撮りづらいプロダクションで、撮影係は苦労したのではと思う。