とても現代的な上演~カイザーラウステン・プファルツ劇場『ファルスタッフ』(配信)

 Marquee TVで『ファルスタッフ』を見た。ベルント・ヴァイクル演出・主演で、2010年にカイザーラウステン・プファルツ劇場で上演されたものである。

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 大変現代的なプロダクションで、ファルスタッフの宿は地球のような絵が描かれたモダンなインテリアだし、アリーチェ(アデルハイド・フィンク)やメグ(メグ・ペイジ)が出てくるところの背景は『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットにシェイクスピアとかメルケルをコラージュしたものだ。女性陣が着ている衣類もすごくオシャレだ。

 女性陣の生き生きしたやりとりが面白いプロダクションで、仲良しのアリーチェとメグにクイックリー夫人(ヤンユ・グオ)も加わってわちゃわちゃ話すあたりが楽しい。この上演のクイックリー夫人はわりと若くて妖艶な女性で、現代的な上演だということもあってアリーチェやメグとあまり年齢や階級の差がなく感じられる。全体的に、歌い上げるというよりは早口でしゃべるみたいな歌い方が多いこともあり、女性陣がしゃべっているところは女同士で会話がはずんでいるような印象だ。

 一方でファルスタッフについては少し寂しい感じの中年男に見えるところがある。ファルスタッフにミニフォルスタッフみたいな人形を持っており(この人形はけっこう演出で活躍する)、パワフルな喜劇的人物というよりは孤独なピエロのような印象を与えることがある。これはこれいいのだろうが、もっと笑えるところが多くてもいいように思った。