諷刺を意図しているようだが、わりとふつうのコメディ~ヴォードヴィル劇場『真面目が肝心』(配信)

 Marquee TVのフリートライアルで『真面目が肝心』を見た。マイケル・フェンティマンの演出でヴォードヴィル劇場で上演されたもので、2018年の公演である。

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 美術はオーソドックスなヴィクトリア朝風のものである。わりと暗めのセットが特徴で、最初のアルジーの部屋も、最後のお屋敷の内部もけっこう陰が多い感じだ。また、使用人がたくさん出てくるのも特徴で、中盤の庭の場面ではセシリー(フィオナ・バトン)がハンサムな庭師をちょっと気にしているみたいだし、アルジー(フェヒンティ・バロガン)の荷物を持って右往左往する召使の気の毒な様子も強調されている。最後の場面では大きな窓の後ろでたばこを吸いながら主人たちのゴタゴタを観察している使用人たちが見える。

 使用人がたくさん出てくることからもわかるように、このプロダクションは社会階級の諷刺を意識しているというのはわかるのだが、そのわりにはそこまで鋭さがなく、ふつうのコメディになっていると思った。面白いところはたくさんあり、セシリーとグウェンドリン(ピッパ・ニクソン)がお茶とケーキのことでくだらない言い争いをしたり、アルジーとジャック(ジェイコブ・フォーチュン=ロイド)が兄弟だとわかって2人が大げさに喜ぶところなどはかなり笑える。そういうわけでつまらないプロダクションというわけではないのだが、私としては3月に恵比寿で見たプロダクションのほうが演出としては好きだ。