こじんまりとした楽しい作品~アンドルー・ロイド・ウェバー『天才執事ジーヴズ』(配信)

 アンドルー・ロイド・ウェバーがやっている配信で『天才執事ジーヴズ』(By Jeeves)を見た。これは一度日本公演で見たことがある。今回の配信は生の舞台を撮ったものではなく、2001年に舞台のキャストでテレビ放映用に撮影したものらしい。P・Gウッドハウスジーヴズシリーズの翻案ミュージカルである。なお、日本語ではこのミュージカルは『天才執事ジーヴズ』と呼ばれているのだが、ジーヴズの職業は厳密に言うと執事(屋敷の管理をする使用人)ではなく従者(個人につく使用人)である(バーティの所帯は独身者1人で小さいので、ジーヴズが家政も全部管理しているみたいだが)。

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 全体的にたしかに撮り方がテレビっぽいというか、バーティ(ジョン・シーラー)が教会のイベントでやっているショーという設定なので、小さい会堂に市民を入れて…ということで、美術も雰囲気もとてもこじんまりした感じになっているため、大きい劇場でやっているプロダクションを撮るものとは全然違う。木のパネルを使ったセットはわりと良い感じで、小道具類も会堂で急ごしらえという設定なのであえてショボくしてあるのだが、それも悪くはない。ハシゴが倒れるところとかはけっこうスリリングだ。

 ゆるめのコメディで、笑いのツボはおさえた演出だ。バーティがバンジョーの夕べを開催しようとしたところで、バーティの演奏能力からして大惨事を予測したジーヴズ(マーティン・ジャーヴィス)がバンジョーがないということにして昔のバカ話を再現する小芝居に変更する…というものなのだが、最後までバンジョーネタを引っ張ってオチにしたり、いろいろ面白おかしいところがある。ただ、お屋敷で強盗のフリをするところなどは日本公演のほうがメチャメチャで笑えたように思う。今まで真面目に演出をしていたジーヴズが最後にちょっと羽目をはずして踊るところはとても楽しい。