女優が演じるベネディック~ブラックフライアーズ劇場『から騒ぎ』(配信)

 昨日に引き続き、アメリカン・シェイクスピア・センターの期間限定有料配信で、ブラックフライアーズ劇場で収録された『から騒ぎ』を見た。

americanshakespearecenter.com

 ほとんど何も無いセットなのだが、『ヘンリー四世』2部作よりはちょっと装飾がある。ヴァージニア州スタントンにある劇場なので、どうもアメリカ南部のお屋敷が舞台なのでは…という印象を与える、アメリカの旗をイメージしたバナーがなど飾られている。着ている衣類なども多少華やかなもので、とくに女性陣はわりと凝ったサマードレスみたいな衣装を着ている。

 シンプルで笑えるプロダクションなのだが、特徴としてはベネディック役を女優が演じているということがある。ジェシカ・D・ウィリアムズ演じるベネディックは大変颯爽とした青年紳士なのだが、通常のベネディックよりもシニカルというか、よりひねったユーモアのセンスがある感じで、とても魅力的なベネディックだ。ウィリアムズは『ヘンリー四世』2部作でも男役だったし、プロフィールによるとヴァイオラやロザリンドも演じているので男装が似合う女優さんなのだろうと思うが、女優がベネディックに扮して女嫌いも甚だしい最初のセリフを言うとなんかちょっと可笑しいような気がするし、結局ベネディックはビアトリスに夢中になってしまうのでそのあたりの呼吸も良かった。ビアトリス(メグ・ロジャーズ)とも息もぴったりあっている。

 また、このプロダクションではふつうは大人しいカップルであるクローディオとヒーローが比較的活動的だと思う。クローディオを『ヘンリー四世第一部』ではホットスパー役だったKP・パウエルが演じており、そのせいかけっこうクローディオにしては熱い感じのキャラクターになっていたと思う。ヒーロー役は『シーザーとクレオパトラ』で若きクレオパトラを演じたコンスタンス・スウェインで、わりとはつらつとしている。なお、ドン・ジョン(ゾーイ・スピアズ)が杖をついて歩いているのはあんまり効いているのかよくわからなかった。