とても気持ち悪い観劇体験~アンドルー・スコットの一人芝居Sea Wall (配信)

 アンドルー・スコットの一人芝居Sea Wallの無料配信を見た。

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 2008年初演の一人芝居を映像にしたものである。最初は明るい感じで始まるのだが、このお芝居は実は事故で娘を亡くした男の絶望に関するもので、大変悲しく、暗い雰囲気で終わる。30分くらいの短編だが、重たい話だ。

 主人公のアレックスは写真家で、セットがほとんどふつうの部屋…というか、写真家のスタジオの一部で、少し散らかっているところがあり、まったくホンモノの家みたいである。さらにアンドルー・スコットは非常にナチュラリスティックで、その場で思いついたことをしゃべっているみたいな演技をする役者なので、正直、見ていると他人の私生活をのぞいているような気持ち悪さがある。スコットの間の取り方とか表情が絶妙で、極めてリアルだ。また、これはスコットの特徴のひとつだと思うのだが、自然な台詞回しをするし、演目によってはけっこう方言を使ったりもする一方、音が明快で声も良く、汚い言葉を使っても美しく響かせることができる。このお芝居でもFワードが満載だが、単調になりやすい罵り言葉にそれぞれ違う感情をこめていて、たまにものすごく悲しく聞こえることがある。アメリカの役者でFワードを言うのが得意なのがサミュエル・L・ジャクソンだとしたら、ブリテン諸島ではアンドルー・スコットありといったところだ。